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第7話 距離が縮まるとき

Author: 釜瑪秋摩
last update Last Updated: 2025-07-19 20:00:14

 お互いの過去を打ち明けてから、ショウとの関係はガラリと変わった。

 メッセージの頻度がこれまでよりも多くなっている。

 ついにはメッセージアプリのアカウントも交換してしまった。チャットのときとは違って、リアルタイムで届くメッセージ。

 毎朝、目が覚めると真っ先にスマホをチェックする。ショウからの『おはよう』のメッセージを見つけると、自然と頬が緩む。学校にいる間も、休み時間の度にこっそりメッセージを確認する。授業中でさえ、机の下でスマホを握りしめて、震動を待っている。

 こんな風に誰かのことを考え続けるなんて、初めてだった。

『今日はなにか面白いことありましたか?』

 帰宅後、いつものようにショウからメッセージが来る。些細な日常の出来事でも、ショウになら話したくなる。

「今日は美術の時間に風景画を描いたんです。先生に褒められて、ちょっと嬉しかったです」

『さすがNORIさんですね! 絵が上手なのは知ってましたが、学校でも認められているんですね。その絵、見てみたいです』

 見てみたい。そう言われると、本当に見せてあげたくなる。でも、学校で描いた絵には私の本名が書いてある。それを見せるわけにはいかない。

「ありがとうございます。でも、まだまだ練習が必要で……今度、別の絵を描いたら見てもらってもいいですか?」

『もちろんです。楽しみにしています。僕も小説の書きかた、もっと勉強しなきゃ。NORIさんに読んでもらえるような作品を書けるようになりたいです』

 ショウの小説。読んでみたい。どんな物語を書くんだろう。きっと、心が優しくなるような、温かい話なんだろうな。読む人を励ましてくれるような、そんな物語じゃないかと思う。

 毎日、ただ他愛もない話を続けていた。何気ない会話が、私にとってはとても大切だった。

 ある日の夜、いつものように長時間チャットをしていたときのこと。

『NORIさんって、将来の夢はあるんですか?』

 将来の夢。考えたことはあるけれど、現実的じゃない。私にはきっと、難しいだろうと諦めていた。

「イラストレーターになれたらいいなって思ったことはあります。でも、現実的には難しいかなって」

『どうして難しいんですか? 以前、画像で見せてもらったNORIさんの絵、本当に上手だと思うのに』

 理由はわかっている。でも、それをどう説明すればいいんだろう。

 少し考えてから、私は思っていることを素直に書き出した。

「絵の仕事って、技術だけじゃダメだと思うんです。人とのコミュニケーションも大切だし、営業とかプレゼンとかも必要で。私は人と会うのも話すのも苦手だから……」

『でも、NORIさんは僕とこうして話せてるじゃないですか。文章で表現するのがとても上手だし、相手の気持ちを理解するのも得意で。それって、すごく大切なコミュニケーション能力だと思います』

 ショウの言葉に、胸が温かくなる。私のことを、そんな風に評価してくれる人がいるなんて。

「ショウさんにそう言ってもらえると、少し自信が持てます。ショウさんの小説家の夢も、きっと叶うと思います」

『ありがとうございます。でも僕も、NORIさんと同じような不安があるんです。小説って、編集者さんとの打ち合わせとか、読者との交流とか、人と関わることが多いから』

「でも、ショウさんは優しくて、思いやりがあって、話していてとても心地良いです。きっと、たくさんの人に愛される作家さんになれると思います」

 こうやって、お互いの夢を語り合い、励まし合う時間が続いた。

 日が経つにつれて、私の心の中に新しい感情が芽生えてきた。

 それは、ショウにもっと近づきたいという気持ち。

 今までは、どんなに仲良くなった人でも、一定の距離を保ちたいと思っていた。でもショウに対しては、もっと知りたい、もっと理解したい、もっと心を通わせたいと思う。

 そして、気づいてしまった。

 これは、恋なのかもしれない。

 ある夜、そんな気持ちが溢れそうになったとき、ショウから意外な質問が来た。

『NORIさんは、恋愛について、どう思いますか?』

 ズキンと胸が痛む。

 どうして今、そんな質問を?

 まるで私の気持ちを見透かされてしまったみたい。

「恋愛ですか? うーん、憧れはありますが、自分には縁のないものかなって思っています」

『どうしてですか?NORIさんなら、きっと素敵な恋愛ができると思うのに』

 できるわけない。

 この顔で、この容姿で。

 でも、そんなことをショウに言うわけにはいかない。

「私みたいな人間は、恋愛より友情のほうが向いてるのかなって。ショウさんはどうですか?」

『僕も、同じようなことを考えてました。でも最近、少し考えが変わってきて』

 考えが変わった?

「どんな風に?」

『人と人との繋がりって、見た目とか、実際に会うこととか、そういうことじゃないのかもしれないなって。心と心で通じ合えることのほうが、ずっと大切なんじゃないかって』

 胸がドキドキする。

 ショウの言葉が、まるで私に向けられているみたいで、勘違いしてしまいそう。

「確かに、そうかもしれませんね。心の繋がりは、とても大切だと思います」

『NORIさんとお話ししていると、いつもそう思うんです。こんなに心が通じ合える人に出会えるなんて、思ってもみませんでした』

 ショウも、私と同じことを感じてくれているんだ。

 互いに同じ気持ちでいるかも知れないなんて、嬉しくてたまらなくなる。

「私も同じです。ショウさんとお話ししていると、心がとても穏やかになります」

『僕にとって、NORIさんはとても特別な存在です』

 特別な存在。

 その言葉を見た瞬間、私の心は決まった。

「私にとっても、ショウさんはとても特別な人です」

 送信した後、心臓がバクバクと鳴っている。

 これは、告白?

 それとも、友情の確認?

 ショウが感じているのは、きっと友情のほうだと思う。

 恋じゃないとしても「好き」と思う気持ちを持ってくれている。だから、こんな話になったんだと思う。それがたまらなく嬉しい。

『ありがとうございます。NORIさんにそう言ってもらえて、本当に嬉しいです』

「私も、ショウさんにそう言ってもらえて、とても嬉しいです」

 その夜、私たちは遅くまで話し続けた。

 ただ――。

 どちらも最後の一歩は踏み出さなかった。「好き」という言葉は、使わなかった。

 それでも、お互いの気持ちは十分に伝わっていた。私たちは、もう友だち以上の関係になっているんじゃないかと錯覚してしまう。

 それと同じくらい、どこかでこの先の不安も感じるけれど――。

 こんなに深く関わってしまって、本当に大丈夫なんだろうか。ショウに会いたいと言われるときが来たら……?

 そのとき、私はショウを諦めることができるだろうか?

 この美しい関係を、どうやって守っていけばいいんだろう。

 スマホを胸に抱きながら、私は複雑な気持ちでベッドに入った。

 嬉しさと不安が、心の中で渦巻いている。

 でも、今は嬉しさのほうが勝っていた。

 中学のころとは違う、初めて誰かを心から愛することを知った。

 そして、認めてもらうことの喜びも知った。

 たとえ、それが画面の向こうの相手でも。

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